今月のあなたの街の材木屋さん

第65回:矢崎木材株式会社(茨木市奈良町7番)

こんにちは!三平です。

今回の訪問先は茨木市奈良町7番32号の矢崎木材株式会社です。応対して下さったのは社長の矢崎収さんです。矢崎社長は大阪木材仲買協同組合が毎年春に開催する総代会の議長をここ10年ほど務められています。本社は前述の茨木市奈良町ですが同社の営業の拠点は摂津市鶴野2丁目にある摂津営業所で、大阪空港から門真まで中央環状線の上を走る大阪モノレールの摂津駅から徒歩数分、中央環状線沿いにあります。隣接しているパチンコ「マルハン」が目印で、三平は昼一番にお邪魔しました。

玄関
↑ 玄関
矢崎木材さんは昭和21年ごろ、大阪市北区末広町(旧綿屋町)で創業されました。創業者はお父上の矢崎萬蔵さん。北区末広町周辺にはかつて多くの材木屋さんが軒を連ねて商売をしていました。三平がこのコーナーで幾度となく記しているように「川のある所に材木屋あり」だったのです。阪神高速道路守口線の工事で「天満堀川」が埋め立てられ、今はその面影すら残っていません。「天満堀川」は東横堀川に次ぐ古い堀川で太閤さんの時代に開削されたそうです。地名としては「堀川戎」が有名です。高速道路が川の上に建設された為、昔からあった川がほとんど埋め立てられました。今ではかつてそこに川があったことすら忘れ去られています。

矢崎社長
↑ 矢崎社長

堀川周辺にはたくさんの材木屋さんがあったことは先ほど触れました。これまで大阪木材仲買協同組合の幹部を務めた、橋本木材や飯田産業に港木材さん等々、錚々たる方々も材木を並べて商売されていました。堀川から移転した材木屋さんも交え、現在も大阪木材仲買協同組合第4支部「北材会」として旧交を温められているそうです。
「親父は末広町の天満製材所で製材の仕事をしていたと聞いている。確かに親父の製材の腕は良かった。」と矢崎社長。矢崎材木店という屋号で創業した当時は、建具材や神具関係の色物(高級品、役物ともいう)を扱っていたという。建具関係は構造材と違って建築の内装材で、人の目に触れます。それに製材・加工技術が要求され、一番大切な木を見る目が要求されます。扱う木材も秋田杉とか備州桧といった高級ブランド材が多いという特徴もあります。
矢崎社長は続けます。「仕入れは関西木材市場がメインだった。原木・丸太を仕入れて製材し、丸太を販売して天満製材所で製材するのです。大阪平林の原木市場にはよく通った。津田産業との取引もその頃から始まった。昭和30年代後半だったと思う」。
三平はこれまでの矢崎社長の話しぶりから「大阪出身ではないだろうし、関西圏とも違うな」と感じましたが、その疑問はすぐに解消されました。

加工機
↑ 加工機

矢崎収氏は昭和10年、福島県会津の野口英世で有名な猪苗代湖の近くで生まれました。中学を卒業した昭和25年春、単身で大阪に出て矢崎木材に就職、15歳の少年がたった一人で汽車に乗って大阪にやってきたのです。「夢もありもっと勉強したかったが家庭の事情で進学を諦めた。そろばん一つ持って出てきた『商売人になるんだ』という志を胸に」。
60年前が昨日のように思える、と矢崎社長。大阪に着いた翌日から親父と市場に行った。当時の「北材会」には大物有力者ばかりだったが可愛がってもらった。昭和39年1月に結婚して矢崎姓になり、同年11月にお父上が逝去されました。その頃には商売の主流を建具材から建築材へシフトされ、木造の在来工法が得意先になっていたそうです。因みに同業者で福島県出身者とは会ったことがない、と矢崎社長。

大工さん加工中
↑ 大工さん加工中

息子さんは4人でその内2人が家業に就き、お二人は1級建築士・2級建築士・宅建等の資格を取得され、お店も建設業許可をお持ちです。得意先とする大工・工務店さんが徐々に衰退し、自分達で建てる方向に向ったそうです。今では売上の70%が建築関係で、材木屋さんというより建築屋さんと言っても過言ではありません。
「あくまでも木造住宅にこだわっている。ゼネコンから木造の相談も受けるよ」と矢崎社長。もちろん、リフォームもマンションの内装もお手のものです。施工に関しては「大工さんとの共存共栄がそもそものスタート」として大工さんとのグループ化を促進されています。

倉庫内の銘木
↑ 倉庫内の銘木

一般の方大歓迎です。「親切をモットーに納得できる仕事を追及しています。目先のことばかりを追うな。お金を追うな。どのお客様にも喜んで頂けるよう、ハートが届くように心がけています」と話す矢崎社長の言葉は、胸に響きます。親父から「得意先に行って足元見て来い!靴の脱ぎ方見て来い!」とよく言われたが決して言葉では教えてくれなかった。「商いは足や、自分の足や」の言葉は新聞記者の三平にも当てはまります。

2階加工場より
↑ 2階加工場より

「坪100万円以上かかった家とか一般に言われるが、お金をいくらかけても良い家は出来ない。職人さんや木との出会いが大切や。それを説明できるようにならんとあかん。喜びは自分に返ってくる。惜しんだらアカン」
全て含蓄のある言葉です。

趣味はない。だから宴会で苦労した。が、ある時北材会の先輩から「遊びも覚えんと良い商売人にはなれんぞ」と忠告され、ゴルフや小唄を仕込まれた。だから趣味はゴルフかな。苦労は当たり前だと思っているので、今まで苦労したと思ったことはない。一晩寝たら忘れてしまう。「商売人は90%他人さんのお金を預かっている」と子どもたちに言っている。だから子供もモノを大切にする。

矢崎社長、長時間ありがとうございました。

矢崎木材株式会社

〒566-0035
摂津市鶴野2-3-23
TEL 072-636-7788
FAX 072-636-7702

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