今月のあなたの街の材木屋さん

第64回:長谷信木材株式会社(大阪市浪速区幸町3丁目)

こんにちは!三平です。

今回の訪問先は大阪市浪速区幸町3丁目1番14号の長谷信木材(株)さんです。応対して下さったのは社長の長谷川幸雄さんと会長の長谷川三郎さんです。このシリーズで幸町の材木屋さんが登場するのは第29回の九州木材商会さん以来2回目です。道頓堀川に沿った材木屋の街「幸町」の歴史は九州木材さんのページに譲り、早速お二人のお話からスタートします。なにしろ会長の長谷川三郎さんは大正7年生まれ、業界最長老の一人で生き字引的存在です。世話好きな人柄と毒舌を交えた論客ぶりは今も顕在です。

長谷川社長
↑ 長谷川社長
社長の長谷川幸雄さんも親父譲りの論客です。開口一番、「業界紙は繁昌してますか?」と問われ、ここ数年の業界新聞の衰退振りを告げると「自分も含めて今の人は新聞を読まないからね。業界がもっと頑張らんと」と同情してくださいました。昭和時代は、勉強不足でも売れた時代が長く続き、次第にホームセンターやハウスメーカーが盛んになり、なんでも知っていないと販売競争に負ける時代になった。住まいに関するあらゆることを施主様は聞いてくる。その架け橋に材木屋はならないと。」

事務所前にて
↑ 事務所前にて

その架け橋に関して「建築業に参入しているのですか?」と質問しました。「当社はあえて建築業に参入する気はありません。要は設計士や建築屋さんといかにリンクするかで、施主様からは責任を持って請けさせて頂きます。仕事は工務店、木工所にお願します。基本はネットワークだと思う。自分だけが勝つ訳にはいかない。これは親父のやり方だし、自分もその通りだと思い実践している」と答えて下さいました。大工・工務店・設計士等とのネットワークづくりはかなり以前から取組んでおられます。

向いの倉庫
↑ 向いの倉庫

長谷信さんのルーツを伺いました。ルーツに関してはやはり長谷川会長の記憶が必要となります。同社の創業は明治32年、大阪長堀で「羽柄材(はがらざい)」専門の木材問屋としてスタートしました。「羽柄材」とは業界用語です。木材には大きく分けて建築材(構造材)と羽柄材の2種類があります。柱や梁といった建築の構造に使う材料を「建築材」と呼び、建築材以外のタルキや板類を総称して「羽柄材」と言います。幸町に移ったのは大正12年のことです。創業者は三郎会長の義理の祖父に当たる長谷川信一さん。屋号の「長谷信」はここからきています。昭和16年に戦争による統制で大阪地方木材に統合され、戦後の昭和21年12月に長谷信木材鰍ヘ再スタートしました。長谷川家は複雑で養子縁組等が絡んで説明するのは難しいのですが「養子制度は大阪船場が生んだ素晴らしい伝統だ」と三郎会長。2代目が長谷川勝二さん、3代目が東七良さん、そして長谷川三郎さんは4代目。5代目が長谷川喜一さんで6代目が現在の社長、三郎さんの長男幸雄さんです。三郎会長は愛知県南設楽郡(みなみ・したらぐん)出身、大阪府警勤務のあと長谷信に入りました。

倉庫外観
↑ 倉庫外観

「戦前は問屋一筋だった。将来のことを考えたら、問屋は誰でもできるが小売は工務店相手にノウハウが必要だ」と一念発起して小売に進出されたそうです。問屋兼小売という業態、当時は珍しい形態だったそうです。また、三郎会長は戦前から合板を扱い、新建材の分野には早期に進出しました。昭和20年代にはすでにベニヤをスタート、永大や大建と取引がありました。

倉庫
↑ 倉庫

長谷川幸雄社長は昭和22年6月1日生まれ。大阪明星学園高等学校から近畿大学理工学部に進み、昭和45年卒業と同時に東京の木場にある深谷木材鰍ノ2年間勤務、埼玉営業所で小売の修業を積みました。長谷信に戻ってからは一社員として倉庫管理の仕事から始まりました。長谷川幸雄社長と言えば何と言っても「林材防」での活躍です。「林材防」とは林業・木材製造業労働災害防止協会の略で、業界に従事する方々の労働災害を防ぎ安全衛生を指導・普及する団体で全国組織です。その辺の経緯を伺いました。かつて幸町近辺には製材所が林立していました。製材所と火災を含めた労働災害とは切っても切れません。ここも三郎会長の出番です。
林野庁から大阪府木連に「林災防大阪府支部」の設立要請があり、時の府木連会長楢崎伝蔵氏が当時大阪市製材協同組合理事長だった長谷川勝二氏を説得、勝二氏が支部長職を引き受けたそうです。その事務局が府木連ではなく長谷信木材内にありました。若かりし幸雄氏が傍らで「林災防」の仕事を見ていたそうです。そして「人がいない。大事な仕事だ。資格をとって自分も手伝おう」と決意されました。現在も材木屋さんに労働災害・安全講習等を分かりやすく説明すべく手弁当で講師として活躍されています。因みに製材組合の最後の理事長が四ツ橋製材の福本桂三氏です。

砂利を敷いて保管
↑ 砂利を敷いて保管

幸雄社長に木材について伺いました。「環境云々ではない。木は人と共生し人を育ててくれた。特に日本人は木に育てられたと思う。材木屋は本当に有難い商売だ。木材の本当の良さをもっとわかってもらいたい。今の偏った住宅をなんとか是正したい」。さらに「商売抜きで木や住いの提案をしたい。一人勝ちは出来ないししたくもない。当社は親切をモットーに信頼関係を大事にしてきた。小さい会社の生きる道はこれしかない」。三郎会長の桐製の名刺には「年中無休 いつでもどうぞ!」と書かれています。また、幸雄社長の名刺はネパール製みつまた和紙で、現地で植林し手すきで作った逸品、結構安価だそうです。親子揃ってユニークというか発想が面白い。
工場・倉庫内を見学しました。
倉庫内では木材を1枚ずつ立てて管理し水処理や乾燥には特に注意を払われています。床に砂利が敷いてあるのはその表れです。全て天然乾燥で出荷。ビス、金物類、接着剤等々、内装建築に使う材料ならなんでも揃っています。もちろん一般の方は大歓迎です。


最後に「売り先=仕入先だと考えている。ゴム屋さんでも設備屋さんでも売り先が仕入先になる。全部がお客様で全部が仕入先だと思っている」−この発想は当たり前でしょうが実践は難しい、感心しました。

会長、社長、長時間ありがとうございました。

長谷信木材株式会社

〒556-0021
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TEL 06-6568-2211
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