今月のあなたの街の材木屋さん

第52回:株式会社伊藤嘉材木店(大阪市住吉区長峡町)

こんにちは!三平です。

私、三平がこのコーナーを引き継いで今回で40回目。その間に、材木屋さんを取巻く環境も大きく変化してきました。特に、大工・工務店さんを得意先にしている仲買さんは試練の時代を迎えています。今回紹介するお店は、創業当初からの商売の中身を大きく変貌させた材木屋さんの一つです。

お店の前にて
↑ お店の前にて
そのお店の名前は(株)伊藤嘉材木店、応対して下さったのは社長の伊藤正雄さんです。取材日は土曜日の朝10時、定刻にトラックを自分で運転して引取りから帰ってこられました。「配達から製材まで、何でもやらなあかん。今、一番泣かされているのは見積もりや。引き合いが多く、手間ばかりかかって中々決まらない。経費倒れや」とぼやかれますが、仕事があって逆に嬉しい悲鳴にも聞こえました。

伊藤嘉さんは住吉大社から徒歩5分、チンチン電車の線路まで50メーターです。かつては住吉大社への納材が多かったそうですが今は途絶えているそうです。創業者は現社長の祖父伊藤嘉四郎さん。大正3年(1914)当地にて個人商店として創業されました。社名の由来も「伊藤嘉」四郎さんに因んでいます。初代は岐阜の産、明治後半に大阪の材木屋さんで修業して独立、二代目は現社長の父上伊藤達雄さんが引き継がれました。商売は一般の建築材、得意先は大工・工務店さんです。法人改組は昭和56年、建築業の許可は平成3年に取得されています。

伊藤社長です
↑ 伊藤社長です

伊藤正雄社長は昭和25年6月1日住吉区墨江で誕生、府立今宮高校から甲南大学経済学部に進まれました。卒業後はニッセキハウスという当時東証一部上場のハウスメーカーに勤務、神戸営業所で建築営業に従事されました。「その時の経験が今に活きている。文科系出身だったが仕事上必要だったので2級建築士の資格を所得した」と伊藤社長。27歳で結婚、28歳で家業に戻られました。

倉庫
↑ 倉庫

その当時はゼネコンや工務店に納材する木材の流通業が中心だったそうです。ところが得意先のゼネコンから「材料だけではあかん、工事までやれ。工事付でないと発注しない」と通告され「このままでは商売が出来ない」と思って施工部門を立ち上げたそうです。親父(当時の社長)は流通オンリーで建築にはアレルギーがあったが、私はハウスメーカー出身、違和感はなかった。自分が一念発起して建築の世界に飛び込んだのではなく、自然とそうなった。流通だけだったら今頃店を閉めていただろう。こうした時期(1998年頃)に伊藤嘉さんにとって歴史的な転機が訪れました。それは全国木材組合連合会が木造住宅のPRの一環として実施した地下鉄の「中吊り広告」です。俳優の柳生博さんをモデルにしたポスターで覚えている方もいらっしゃるでしょう。広告の反響は大阪府木連にとどきましたが、府木連には当時受け皿がなかったのです。そこで伊藤嘉材木店が手を上げて受け皿になったのです。伊藤嘉さんが施工して完成した木造住宅は「甲東園の家」として雑誌「カーサウェスト」に掲載されました。

建築設計室
↑ 建築設計室

その雑誌には建築主の奥さんのコメントが載っています。「震災前から建て替えるつもりでメーカーの展示場もよく見て回りました。アレルギーの子供によくないものは徹底的に排除しようと思ってもメーカーの住宅では思い通りにならず、規格品以外に変更すると高く付くことも分かりました。(中略)そんな時、主人が地下鉄で全国木材組合連合会の《木の家》の広告を見て、訪ねたところ、工務店さんに声を掛けて私たちの条件で出来るところを募集していただける事になりました。そして伊藤嘉材木店から予算範囲内で可能なプランの提案を頂き、建築家の小河原さんにお会いました。・・・・」

この仕事が転機になった。雑誌に載った反響も大きく設計士とのつながりもこの雑誌をとおして連鎖的に増えていった。羽木先生、竹山先生とも懇意になった。特に竹山道明先生の住吉東の長屋を改造した設計工房「風」は弊社が施工した。府木連の広告が起爆剤になった。更に伊藤社長は「お金はかかるだろうが地下鉄の中吊り広告を頻繁にやって欲しい。絶対効果はありますよ」と笑いながら話す。

伊藤嘉材木店が手がけた物件
↑ 伊藤嘉材木店が手がけた物件

木材の流通業から建築の世界に飛び込んだ伊藤嘉さんですが「得意先である工務店の仕事を奪う事になるので最初は逡巡した。でもこれは必ず乗り越えなあかん道や、と思った」と当時の苦悩を話して下さいました。案の定、木材の商いは減ったが会社の売上は倍に。現在同社の木材と建築の売上比率は1:9だそうです。
「建築と名が付けば、新築、リフォーム、なんでもやる。ポリシーがないのかなあ。免許とって15年、現在研鑽中、発展途上だと思ってください」の言葉は伊藤社長らしいコメント。

一般の方、大歓迎。材料売りから加工まで、新築からリフォームまで何でもやります。年間7〜8棟の新築住宅、常時大工さんを6人抱えている。後継者のご子息も入社されています。前面道路は狭く、交通量も多い。車の出入り、製材の騒音、ご近所には迷惑を掛けている、が地域の方は暖かい。感謝しています、と伊藤社長。

大学時代に陶芸クラブで活躍した伊藤社長、長時間ありがとうございました。

株式会社伊藤嘉材木店

〒558-0044
大阪市住吉区長峡町7-23
TEL 06-6671-2579
FAX 06-6675-1123


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