今月のあなたの街の材木屋さん

第13回 :株式会社 福清 (大阪府松原市)

今や国民病とさえいわれる「花粉症」。私は花粉症と言う名が一般的になる前ですから、そうですねえ30年ほどまえから 悩まされています。先日(3月19日)東京に行ってきましたが東京はひどい、大阪の比ではありませんよ。10人中3人はマスク姿で、そのマスクもカラス天狗(白ですが)か怪傑ゾロ、南海電車のラピートみたいな形でピチッと顔全体を覆うものが主流、昔風のマスクは皆無でした。この前、花粉の出ない「無花粉スギ」が新たに確認されて『爽春(そうしゅん)』と名付けられたという新聞記事がありましたが、その成果も早くて20年先でしょうね。国も本格的になんらかの対策を講じないと―「たかが花粉症、されど花粉症」。


株式会社 福清
↑ 株式会社 福清

今回お邪魔しましたのは株式会社福清さんです。大阪府松原市小川5丁目、そのあたりは無案内なので事前に地図をFAXして頂きました。車で向かったのですが、その詳細な地図を手にしてもなお迷ってしまいました。なにしろ阪神高速・西名阪・近畿道・中央環状の4つの幹線道路が交わる松原インターチェンジのすぐそば、付近は道路のパズルみたいでしたから。これはいい訳です。


福清さんは和室用造作材専門の集成材メーカーです。造作材というのも業界用語ですね。具体的には敷居、鴨居、長押(なげし)、廻り縁などを総称して造作材と呼びます。それを無垢(ムク)材ではなく集成材で生産しているのです。集成材の意味も幅ひろいですね。木の温かみを活かしながら、節やきず、反りや曲がりといった無垢材の欠点を補い、無垢材では不可能な巾や厚みの材も作る、そんな木材加工技術の結晶が集成材だそうです。


福田敬一社長
↑ 福田敬一社長

社長の福田敬一さんは昭和27年7月17日生まれ、52歳。「戦前は祖父が吉野で山林を経営しており、次男坊であった親父(福田薫さん、大正11年生まれでご健在)が終戦後の昭和21年に大阪の天六で建築屋さん相手に材木屋を開業しました」と福田社長は福清の生い立ちを話して下さいました。それで仲買組合第10支部(大阪市北区が多い)所属だというのも納得できました。昭和50年に同志社大学を卒業して2年ほどサラリーマンを経験、当時の福田商店に入社。しばらくして、「このままではあかんな」と思い、材木屋をやめてかねてより考えていた大好きな「ケーキ屋になろう」と決心し、親父に相談したら「物づくりがそんなに好きなら集成材がある。ケーキ屋は手助けできんが、集成材なら・・」。この言葉がきっかけとなって集成材部門を立ち上げましたと福田社長。


芯材をモルダーで削って仕上げていきます。
↑芯材をモルダーで削って仕上げていきます。

当初は一番売れ筋の「柱」からスタートした。芯材はエゾ松、表面に貼る単板(薄い板)は吉野桧。全部自社で生産、「しょっちゅう騙されました」と当時を振り返る福田社長。集成材の表面に貼る材料は肉に例えれば「ロース」、マグロで言えば「トロ」の部分。最高の材料を使います。素人だと思って上と下にいいもん積んで中は下級材が混じっている、人間が信じられなくなりました、と。それにあの頃は無垢が主流で集成材は「ニセもん」とか「貼りもん」と呼ばれて馬鹿にされていました。ご苦労されたんですね。


今回の厚みは0.7ミリでツキ板をつくっています。
↑今回の厚みは0.7ミリでツキ板をつくっています。

工場を案内していただきました。建物は3階建て。3階には集成材の表面に貼る化粧板の原盤(樹種はヒノキやスプルースなど)とスライスされた単板が保管されています。単板(スライサー)を作る現場も見学しました。いわゆる「ツキ板」ですね。大工さんのカンナを想像してください。出てきた単板は乾燥機に入れて乾燥します。人工乾燥はKD(Kiln―Dry)と呼ぶそうです。因みに昔ながらの天然乾燥はAD(Air−Dry)です。現在使っている芯材はヨーロッパのホワイト・ウッドとチリのラジアータ・パインの集成材がほとんど。2階と1階ではモルダー(きっちりした寸法に削る機械)や接着する機械などが稼動しています。
ツキ板を人工乾燥中
↑ツキ板を人工乾燥中

最終製品です。
↑最終製品です。


福清さんで特筆すべきは中国貿易です。縁あって入社した社員さんの関係で7年前から中国・上海の会社と提携し、和室の減少を予想して洋間向けの材料を手がけるようになったのです。JAS認定を取得しているその工場で生産された階段の丸手摺やフリー盤(自由にカットして使える集成材の盤)=樹種は主にタモ=を大量に輸入しています。去年大学を卒業したご子息(24歳)は現在中国で語学研修中だとか。将来を見据えた留学でしょうね。


和室にこだわり続ける福清さん。「若い人は和室を好まないようですね。旅館や料亭からの需要も激減しました。リフォームも和室から洋室はあってもその逆はないですもの」と和室の退潮を嘆く。趣味はゴルフだそうです。

福田社長、工場を案内してくださった大倉数馬工場長さん、ありがとうございました。


株式会社 福清

〒580-0002
松原市小川5-18-28
TEL 072-331-9591


会社の詳しい情報はこちら      お問い合わせはこちら