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2階はライブラリー兼客間 雄大な自然の中に浮かぶ、憩いの空間。 |
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設計のポイント
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既に増改築を繰り返し秩序を失った家は暗く、澱んだ空気に支配されているように見えました。そこでまずは強度的に不安のあった床や壁、構造を覆い隠していた天井を全て取り去り、柱・梁だけを残して建物内部をスケルトンにすることから始めました。そこに杉の無垢フローリングを敷き詰め、光と風の通り道を注意深く探りながら、必要な場所に壁を再配置して行きます。そして露わになった柱のほぞ穴や切り欠きには埋め木を施し、梁には補強のために新たな材を追加。また室内の段差をなくすために下がった床に合わせ、既存の建具に足し木をして対応。構造補強のためいったん取り外さざるを得なかった欄間も、取り付け位置を変えて再利用します。そんな「木のパッチワーク」とでも言うべき作業を積み重ね、この家は完成しました。もとからあったものを覆い隠してしまうのではなく、手を加えたうえで活かすことにより、それまで家が重ねてきた年輪を空間固有の魅力に変えられるのではないかという提案です。
ちなみに床のワックス塗り、そして壁の珪藻土施工は、住まい手ご夫婦とご友人たちによるものです。生まれ変わった家と共に新しい歴史を刻んで行くのは、他ならぬ住まい手。住まいづくりに自らが参加することによって、まずはその一歩を踏み出したと言ってもいいでしょう。
当初「和風の家がいい」というクライアントからのご要望に、正直なところ私たちは戸惑いを隠せませんでした。「〜風」とは偽物のことだから「和」をやらせて下さいとお伝えするところから、今回の計画はスタートしました。初めのうちは暗中模索でしたが、打ち合わせを重ねる毎、そして工事を進めるうちに、住まい手とつくり手の思いがひとつになって行き、最終的に「そこにしかないもの」が生まれたと思います。
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