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第77回:有限会社橘商店(大阪市西区立売堀6丁目) (2010.11.30 更新)
皆さんこんにちは! あなたの街の材木屋さん、担当の桔平です。
突然ですが皆さんは「名栗」という言葉を聞いたことがありますか?
桔平は初耳です。名栗(なぐり)とは、木材(主に栗材)の輪郭面をチョウナや突きノミと呼ばれる専門のノミ等を使って独特のリズムで削り痕を残す、日本古来からの木材加工技術です。古くからの日本建築で門扉や垣、濡れ縁、腰板として使用されており、洋式の建物でも(ルーバー、棟木、廻縁)取り入れられるようになり、近年では店舗のフローリングや壁面等でも用いられているようです。
↑ 名栗加工の様子 | ↑ 名栗に用いるノミの数々 |
工業化や機械化の進む木材業界にあって、この名栗を専門に扱う業者はいまだに手作業による加工が中心です。木材を扱う色々な業者の中でも、いわゆる典型的な大阪の商売人というよりも昔ながらの職人気質が漂うのがこの名栗屋さんではないでしょうか。
↑ 本社外観 | ↑ 橘善一社長 |
今回の訪問先は大阪市西区立売堀の有限会社橘商店さんです。
創業は明治43年で、100年以上も続いている老舗の材木屋さんの一つに数えられます。早速、会社のルーツから話を進めることとしましょう。インタビューに応じて下さったのは現代表者のご子息 橘明夫さんです。
橘商店さんの創業は明治43年、橘鹿蔵さんが西区あみだ池で名栗専門の材木店を始められたことに遡ります。その後、桜川、堀江と近隣への移転がありました。当時、名栗は店頭販売のほかに市場への出品もあり、地方の銘木・材木屋さんもたくさん購入されていたそうです。 ところが、昭和20年、戦争で当時あった店舗が全て焼失してしまいました。
昭和26年、東区横堀(現在の中央区南船場)にて、明夫さんの祖父でもある橘元三郎さんが営業を再開しました。その後、昭和31年には現社名の有限会社橘商店へと改称・改組し、昭和38年には、当時木材市場が近くにあったことから西区立売堀に移転することとなりました。
時代が平成に移ると同時に、現社長の橘善一さんが3代目の代表者となり、程なく同町内である現在のお店に移転、現在に至ります。
↑ ブログに書き込み中の明夫さん |
今回の応対者である、橘明夫さんについて紹介いたします。 昭和50年、西区立売堀で生まれ、家業の影響もあってか、幼少の頃から名栗に親しみ、祖父とともに木に触れて遊んだ記憶の中から、知らず知らずのうちに仕事を手伝うようになったそうです。 大学を卒業し、釣具店勤務の後、平成15年に家業に戻られました。 そうした経歴もあってか、趣味はバスフィッシングとアオリイカ釣り。また、小学校低学年から続けているサッカーそして最近ではフットサルにも熱心で、ワールドカップにはチケットをとって現地まで観戦に行くほどの行動派です。 |
↑ 壁面に名栗を施した某セレクトショップ |
明夫さんの「より多くの材木屋さんに名栗の良さを知ってもらって、消費者の方にPRしたい」との思いから、自社のホームページを作成し、会社のことや名栗のことをPRしています。ブログでも写真を交えて、数々の取扱い商品や情報を紹介されています。
桔平もこのブログを拝見していて、楽しみながら名栗のことを勉強させてもらっています!
ところで、私たちの暮らしの中で、よく注意してみていると、実に色々なところで名栗が利用されていることに気付かされます。例えば、有名な建築物や時代劇のセットから洋服屋さんや外食産業の内装に至るまで多種多様です。
「名栗は日本古来から伝わる伝統的な木材加工技術なのですが、これからは今までとは違う利用方法をこちらから提案していかなければいけないでしょうね」と明夫さん。デザインや用途も昔風ではなく、デザイナーや建築士ともつながりをもちつつ、現代風にアレンジして新たな需要者を開拓する必要があることを話されていました。
家業に戻るとほぼ同時に入会した、大阪木材青年経営者協議会(略称:大青協)で築いてきたネットワークを活かし、デザイナーズウィークという合同の展示会のほか、各種展示会でも商品を出展され、一般の方々への広報活動も積極的です。「大青協ではお手本になる先輩、刺激を受ける大勢の仲間のお陰で色んなチャレンジをする事が出来ました。」と明夫さん。
まさに伝統工芸・匠から現在風のデザインやアートへ、明夫さんの柔軟な発想と旺盛な実行力に今後益々期待されるところです。
↑ 栗の板材 | ↑ 栗の原木 |
最後にお店のご紹介です。
日本全国でも数少ない栗材・名栗加工専門の材木屋さんです。
創業100年、名栗・栗材と言えば橘商店。栗材を中心とした名栗加工各種はもちろんのこと栗別挽材や、近年では栃・ウォールナットの天板は多数取り揃えています。広葉樹(原木・製品)・銘木のことはおまかせください。
現在の取引先・販売先は殆んどが材木屋さんか銘木屋さんですが、もちろん一般の方からの問い合わせも歓迎いたします。
橘商店のスタイルは、方々の材木屋さんのお困りに対応する稀な会社です。特に広葉樹に関しては探しモノや、わからないことは良く聞かれます。
ここで皆さんへ参考のため栗材の特徴を紹介いたします。
【栗材】…硬くて重くて粘りがあるが加工はし易い。耐水性に優れているので昔は鉄道の枕木として有名でした。また、住宅の土台に最適の材料とされ、国産材の中ではトップといってもよいほどの耐久性があります。丸太は直径30~60㎝前後。あまり大木にならず、真っ直ぐに伸びないため長尺材は少ない。色は黄褐色で木目が優しく、木肌は緻密、なめらかで光沢があり、食器や家具用材にも使われる美しさを備えています。水に強いため、日本建築において外壁や門材として使うとその特徴を発揮します。似た材のタモと比べるとその耐久年数の違いは歴然。
社長さま、明夫さん、長時間の取材ありがとうございました。
有限会社橘商店 〒550-0012 大阪市西区立売堀6-9-5 TEL 06-6443-2108 FAX 06-6443-6881 →会社の詳しい情報はこちら →HPはこちら |